2.信託の歴史的背景と社会的価値

歴史的背景

信託の歴史は人が財産を持つようになったときに始まり、古くはエジプトや古代ローマの記録にも信託の考え方があらわれていると言われています。

その後、中世のイギリスにおいて行われたユース(土地を直接教会に寄進しないで、信頼できる人に譲渡し、譲渡を受けた人がその土地からあがる収益を教会に寄進する方法)を経て、近代的な信託制度へと発展していきました。

この制度がアメリカに渡り、個人の遺言の執行や遺産の管理目的での利用が普及し、資本主義の発達にともなって、信託の引受けを会社組織によって行うものが現われました。

日本では、アメリカで発展した制度が明治の後半に導入され、明治38年に担保附社債信託法が制定され、有力銀行が営業免許を受けて担保付社債信託業務を行うようになりました。戦後になると、経済復興のため、電力、石炭、鉄鋼などの基幹産業向けに安定資金の供給が必要になり、昭和27年に貸付信託法が制定され、信託銀行による貸付信託の取扱いが開始されました。その後、信託を活用した新しい商品の開発が進み、また、信託の利用目的も企業の財務体質の改善や資金調達の分野へと拡がってきました。

昭和60年代に大きく進んだ金融の自由化は信託分野にも及び、主として利用者の利便性を高めるという観点から銀行や証券会社が信託子会社を通じて信託サービスを提供することが認められるようになりました。その後も信託の自由化が進み、平成16年に改正『信託業法』案」が成立し、財産権一般の受託が可能となるとともに、金融機関以外の事業会社の参入も可能になりました。

信託の社会的価値

このように、信託は社会や経済の発展にともなってニーズに対応するかたちで進化してきました。明治時代に民事信託(個人間での財産管理)から出発した日本の信託は、その後、商事信託(年金信託や貸付信託)分野での役割が拡がり、近年では新しい投資や金融スキームの重要な手段として広く活用されるようになっています。

信託は主要な基本は以下の3つの機能といわれています。

1.財産管理機能
財産の管理処分権が受託者に与えられる
2.転換機能
信託財産が信託受益権という権利となり、信託の目的に応じた形に転換できる
3.倒産隔離機能
信託財産が委託者および受託者の倒産の影響を受けない

これらの機能によって、信託は安全性を担保しながら、資産活用や投資の自由度を高める仕組みとして今後もその役割を拡大していくことが期待されます。