3.新信託法について

信託法は大正11年(1922年)に制定されて以来、80年以上に渡り実質的な改正がなされることなく現在に至っておりました。また、社会・経済活動の発展や少子高齢化による社会構造の変化などから、商事・民事双方の信託分野において、新たな信託へのニーズが高まってきていました。

このような背景の中で、信託法を見直し現代化を図るための検討が平成16年から始められ、平成18年2月には法制審議会による「信託法改正要綱」が取りまとめられました。この答申を受け法案の策定作業が進められた後、平成18年12月の第165回臨時国会にて新信託法が可決成立し、平成19年9月30日から施行されました。

新信託法は、改正前の信託法から主として以下の点について大きな変更が加えられています。

(1)受益権の権利行使の実効性や機動性を高めるための措置

複数の受益者による意思決定を多数決で行うことを認めるとともに、受益者集会制度や決議に反対する受益者の保護などに関する規定が整備されました。

受益者が存在しない場合に信託管理人を選任することが認められるほか、受益者が特定・現存している場合であっても、受益者のために受託者の監督を行う者(信託監督人)や受益者のために受益者の権利を行使する者(受益者代理人)を選任することができる制度が新設されました。

新信託法では、受託者による信託事務の処理の適正を確保する観点から、信託財産に関する一定の情報を定期的に受益者に対して提供する義務を受託者に課すなどの整備を行いました。

新信託法では、信託違反行為について受益者保護の実行性の観点から、事前の救済制度として、受託者に対する行為差止請求権が新設されまました。

(2)受託者義務の適切な要件下での合理化

改正前信託法では、忠実義務に関する規定が不十分であったことを踏まえ、新信託法において、忠実義務に関する一般規定を新設するとともに、利益相反行為の制限、競合行為の制限を設けるなどの整備を行いました。なお、信託行為に利益相反行為を許容する旨の定めがある場合や、重要な事実を開示して受益者の承認を得たときなどには一部例外を認めています。

信託の目的に照らして相当と認められるときには、信託行為に定めがない場合であっても、受託者が第三者に信託事務を委託することを許容し、受託者が第三者へ委託することについての許容範囲が拡大されました。

(3)多様な信託の利用形態に対応するための制度の整備

信託の併合と信託の分割について、社会的なニーズが指摘されておりましたが、改正前信託法においては規定が存在しておりませんでした。そこで、新信託法では、こうしたニーズに応えるべく信託の併合・分割の手続を明確化するとともに関係当事者間における利害調整を図る観点から、新たに規定が新設されました。

新信託法では、信託を多様な形で利用するというニーズに応えるため、新しい信託の類型として、受益証券発行信託、限定責任信託、目的信託、自己信託を定めています。